最終章-前編-



黒の粒子は霧や煙へと形状も性質も変化させて少年を中心に渦巻く。纏う。それは不穏な音を立てながら要塞となり立ちはだかった。


遠く。苦く。

見覚えのある姿に。


「行くぞ、てめえら!」

声を上げて先陣を切り駆け出すスピカをダークシャドウが遅れを取るまいと追尾する。

「後は任せたぞ」

フォックスはウルフを振り返る。

「──信じてるからな!」


これが。最後の。


「いっちゃったね」

タブーは浮遊しながら遠く見つめる。

「しんじるの?」
「そいつは癪だが今は仕方ない」

ふんと鼻を鳴らして。

「こわい?」

ウルフは横目でじろりと睨みつける。

「ふふ」

恐怖などといった下らないものは悪夢から引きずり出されたあの日から捨てた。


だから今度は。

俺がてめえを悪夢から引きずり出す──!


「やさしくしてあげるね」

程なくタブーの胸から深い紫色の光の玉が抽出された。自らの意思で取り出したらしいそれをタブーは手の平で包み込むように受け止めると静かに口付けて。──体の端から空気中に溶け出すようにブロックノイズ化する。その様子を確かに見届けたが刹那残された紫色の光の玉が勢い付けてウルフの胸の中へと飛び込む。

「、く……!」

心臓が焼かれるような感覚、痛みに顔を歪めて地面に崩れ落ちる。熱い息を吐き出してけれど意思は確かに睨みつける先には要塞があった。

ルーティ。……そこで待っていろ!
 
 
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