最終章-前編-
……え?
「マジかよ」
そんな声が飛び出してくるのも当然のこと。流石は創造神の残した切り札といったところだがこうもあっさりと決着がつくものなら今までの悪戦苦闘とは何だったのか。文字通り神のみぞ知るままに掌の上で踊らされたというか。
「やってもいいの?」
装填も充電も不要となれば話は早いようで。
「お、おう──」
「待ってくれ!」
慌てて話に割って入るフォックス。
「本当に信用していいんだな?」
念を押せばタブーはこくりと小さく頷いた。気持ちは分かるがあれこれ心配して迷わせている場合でもないだろと指摘を受けそれもそうかと丸め込まれそうになったのも束の間。
「そのかわり。ルーティのからだがばらばらにふきとんじゃうとおもうけど」
撤回。
「駄目に決まってるだろ!」
フォックスがすかさず声を上げる。
「ま、マスターとクレイジーは?」
「ふたりはかみさまだから」
タブーは淡々と。
「でもルーティはただのにんげんだからぼくのぜんりょくのOFFはどうをなまみでうけたらばらばらにふきとんでしんじゃう」
成る程──断片的な情報でしかないがタブーはOFF波動の零に帰す能力を利用して暴走の原因ともなっているマスターとクレイジーを弾き出そうと考えた。しかしその技は威力を遥かに増幅させたものであり何かしら対策を立てない限り今度ルーティの体が耐えられない。
対策、か。より安全で確実なものを考えるべきだろうが長く思考を巡らせている時間もない。創造神と破壊神の魂を放浪の悪魔が無理矢理に繋ぎ止めているのだ、ルーティでなくともその負荷は計り知れないものとなる。双子も融合を果たされてなるものかと抵抗しているのだから猛獣が木の箱の中で暴れているようなものだ。
「防御バフをかけるというのは」
リンクが提案する。
「耐性を上げればダメージは軽減されるはず」
「だめだよ」
即座に否定されてしまう。
「ぜんりょくのOFFはどうはいっかいだけ。つぎのはつどうまでにじかんがかかる。へんにたいせいをあげてしっぱいしてもしらないよ」
確かに、壁を作ってそれを殴らせるのでは本末転倒もいいところだ。意地が悪い双子と違って嘘をついている様子もなく、その特殊なOFF波動が一回きりというのも本当なのだろう。
くそ。考えろ。
選び取るのなら最善を。
「クソガキ」
次に口を開いたのは。
「俺様の体を使え」