第二章-前編-
いつから此処はご当地グルメ会場になったのだ。
「……餅?」
「如何にも」
忍び装束の青年はふっと笑った。
「拙者はゲッコウガのミカゲ。此れは里の名物和菓子で御座る」
きらりと目尻が光り、声を張り上げる。
「名付けて『暗殺餅(あんころもち)』!」
ネーミングが。
「その名に化かされてはならぬ」
「騙されるより何より手ぇ出さねえだろ」
マリオがさらりと突っ込み。
「なんと! この菓子は全てが唐辛子またはワサビ入り!」
「最初から殺しにかかってんのかよ!」
それを聞いたユウ、ひょいとその内のひとつを摘まむと。
「……リオン」
「はいっ!」
「食べさせてやろう」
リオンは紅潮した頬をうっとりと手で包んで。
「こ、ここは天国ですか……」
「お前が見るのは地獄だよ」