第二章-前編-



いつから此処はご当地グルメ会場になったのだ。

「……餅?」
「如何にも」

忍び装束の青年はふっと笑った。

「拙者はゲッコウガのミカゲ。此れは里の名物和菓子で御座る」

きらりと目尻が光り、声を張り上げる。

「名付けて『暗殺餅(あんころもち)』!」 

ネーミングが。

「その名に化かされてはならぬ」
「騙されるより何より手ぇ出さねえだろ」

マリオがさらりと突っ込み。

「なんと! この菓子は全てが唐辛子またはワサビ入り!」
「最初から殺しにかかってんのかよ!」

それを聞いたユウ、ひょいとその内のひとつを摘まむと。

「……リオン」
「はいっ!」
「食べさせてやろう」

リオンは紅潮した頬をうっとりと手で包んで。

「こ、ここは天国ですか……」
「お前が見るのは地獄だよ」
 
 
13/53ページ
スキ