最終章-前編-
俺も。この世界も。
終わるつもりはないようだ。
……ラディス。
「さてと」
フォックスは静かに振り返る。
「神様の考えることは分からないな」
微風に靡く薄紫色の髪。双眸の赤と青は双子の神よりその力を分け与えられた証。黒の衣装を纏い見詰める先には少年が変わらず立ち竦む。
「……マスター。クレイジー」
小さく呼ぶ声は他の誰より幼いもので。
「ルーティ」
全てを零に帰す禁忌の神。
「──タブー様!」
駆けつけたダークシャドウに気付いてタブーはゆっくりと振り返った。
「おはよう」
此方の心情とは裏腹に拍子抜けしてしまう声と態度に小さく息を吐いてしまう。
「無事でいらしたのですね」
「うん。さっきおきた」
ダークウルフはそこでようやく気付く。我らが破壊神は禁忌神を定期で行なうメンテナンスにかけていたのだと。この場と状況に見合わない出会い頭の挨拶もそれならば納得がいく。
「かおいろがよくない」
かくんと首を傾げて覗き込む。
「ちょうしわるいの?」
「い、いえ──」
「タブー」
やって来たのはフォックスだった。ぞろぞろと集まるX部隊の面々にタブーは問うのを止めて訝しげに見つめる。
「どうしてここに来たんだ」
「、いってもいいの?」
「構わない」
フォックスはほんの少し眉を寄せる。
「メンテナンスがおわったらきていいよって」
タブーは遠く視線を遣りながら、
「マスターが」
思わず声を上げそうになったものの、抑える。言い付けておいたのがクレイジーではなく兄のマスターの方だったとは想定外の事態だ。そうすることで問題が大きく左右されるものとも考えにくいが兎角彼はこうなるであろう未来を見越して切り札を残していたということなのか。
「率直にお尋ねしますが」
リンクは人差し指の背を顎に当てながら。
「あれ。どうにか出来ますか?」
タブーはもう一度その方角を見遣る。
「ルーティのこと?」
「凡その状況は把握しているつもりですが」
「できるよ」