最終章-前編-



踏み込む。距離を詰める。

目鼻の先とまで迫った時見開かれた双眸に閃光──防壁を展開させてすかさず解き放った。細かな破片が襲いかかり容赦なく傷を刻むが足を止めない構わない。魂が燃え尽きてしまう前に必ず暴走の元凶を外に弾き出す──この世界を悪魔の思惑通り塗り潰させてなるものか。

「チッ」

脆い体に亀裂が走るように深い切り傷に鮮血が散って地面を濡らした。脇を擦り抜けすかさず切り返すもまた同じように防壁が展開される。読めた術を冷静に見据えて地面を蹴り出し高く跳び上がった。体勢を変えてより一層強い光を纏い彗星の如く降下。全ての景色がスローモーションとなって映し出される最中脳裏に走馬灯と思しき映像が駆け抜けた。まるで幕を下ろすかのようにして静かに瞼を閉ざせば。


最期の刻を。


「──!」

眩いばかりの光に異変を察知して目を開く。次の瞬間クレシスが見つけたのは巨大な白い魔方陣だった。ただ感情もなく見つめるだけでこれほどまでに大きな魔方陣を詠唱もなく──驚愕している間に魔方陣の中央に光の粒子が集まり膨張していくのが見えた。どんな攻撃を下されるか目で見て分かるがこの体勢では躱しようがない。まさか最後の最後でこんな結末を。

ああくそ。……本当に。

お前みたいに格好つけたかったな──


「……え」


誰かが小さく声に洩らした通りだった。

虚空から何の前触れもなく振り下ろされた斬撃は神威の如く。一瞬にして魔方陣を砕いて消滅させると次の手も許さず赤紫色の波動を打って弾き飛ばしてしまった。一方でクレシスも二度目の波動に巻き込まれて纏っていた光が失せてしまう。呆気にとられていたが最後、石の礫がこめかみを突いて情けなくも意識を手放して。

寸前に捉えたのは。

見る者を魅了する極彩色の──
 
 
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