最終章-前編-
「──ッッ!」
地響き。地面が揺れて視線を遣ればフォックスもファルコも目を開いた。注目を置いた先には光の鎖に捕らわれてスピカ含む複数のダークシャドウが宙に吊るされてしまっている。中央の少年基ルーティは光宿らない瞳を何処へ向けるでもなくただやはりその場に佇み続けていて。
「やめるんだ! ルーティ!」
……戦いたくないよ。
「えっ?」
今の。声は。
はたと隣を見ればファルコも同じような現象に見合わされていたようだった。しかしもう一度地響きが起こるとそれも呆気なく掻き消されて問題の彼らに向き直る。捕らえる光の鎖は特に影で生成されたダークシャドウの手首や足首を熱せられた鉄を押し当てたかのように焼いた。悶え苦しむ仲間たちを目にスピカは顔を顰めて繰り返しその心に呼びかける。
「目を覚ませ! ルー!」
だがしかしその声が届く気配はない。注意すら向かないのであればと黒い閃光を散らせばようやく視線が向いた。朱と蒼の双眸が確かに自分を捉えると声が届いたものと錯覚して攻撃を下そうとしていた手を止めてしまう。けれどそうであるはずもなく彼の頬に青い閃光が走ると。
「──ああぁああああ……ッ!」
鎖を伝って大量の電気が流し込まれる。
「リーダー!」
ダークウルフは声を上げると拳銃をルーティに向けた。視線が向くより先には発砲するもまるで見透かしているかのようで透明な障壁に弾が吸い込まれていく。銃撃が止むと光の鎖はより一層強い光を宿して手首や足首を締め付けた。声にならない声が各所で上がりスピカも苦痛に耐えるべく閉ざしていた瞼を薄く開く。
「う、ぐ……ッ」