最終章-前編-
踏み込み、地面を蹴って飛び出していく息子の背中を目に何を思うのか。親の心子知らずとはよく言ったものだがいつになれば親の気持ちを汲み取ってくれるのやら先が思いやられる……
「リーダー!」
追ってきたのはダークウルフだった。スピカはちらりと視線を向けたが前方に向き直る。
「止めようってなら──」
「いいえ。我々にもご命令を」
何処まで忠義を尽くすつもりなのか感動を通り越して呆れてではないが物も言えない。小さく息を吐くと目付きを変えて。
「──アイツの注意を逸らして隙を作れ!」
お前だって。
壊したくないはずだろ。……ルー!
「フォックス」
パートナーの声でようやく我に返れた。直後の地響きに顔を上げて其方を見れば一人の少年を中心に激戦が繰り広げられている。様々な音や声が飛び交い砂塵が舞い上がれば弾かれ同時に立ち向かった各々は地面に叩き伏せられそれを自分が思うよりも長く続けているようで。
「謝るなよ」
言い当てられて言葉を呑み込む。
「誰にも止められなかった」
「……運命だからか?」
「皮肉るなよ」
ファルコは遠く見つめて目を細める。
「運命じゃなかったとしても──アイツは飛び出していったし誰も止めたりしなかった。そうだろ?」