最終章-前編-



それは、と言って口を噤む。

「いいことを教えておいてやろう」

クレシスは告げる。

「ルキナの見た未来ではお前を含むダークシャドウは既に全滅していた。この場に辿り着けもしなかった。X部隊は分断後半壊。それが何を意味しているのか分かるか?」

遠く。

「未来はどう足掻いても変わらない。お前たちはただ単に大事な仲間を引き連れた最高の状態で同じ絶望の未来に辿り着いたというだけだ」

胸を打つ心臓の音が煩わしく。

「違うッ!」

振り払うように叫ぶ。

「だったらこれから変えればいい!」
「変わらない」
「どうして言い切れるんだよ!」
「変わらなくていいものは変える必要がない」

ぐっと言葉を呑む。

「お前たちの言う最善とは何だ。世界の破滅を妨げて被害を最小限に抑えるのが目的なら今の最高の状態を生かすべきじゃないのか。世界や人々が望んでいる最善こそ最優先に考えろ。お前たちはお前たちの都合で変えられたかもしれない未来を滅ぼすのか? それは本当にそこで苦しんでいる親友が望んだ結末なのか?」


それは。


「うわあああッ!」

弾かれたように其方を振り返る。

黒煙は少年を中心に大きな力によって勢いよく払われた。その衝撃波に巻き込まれた特務精鋭機関の兵士たちは呆気なく吹き飛ばされて地に投げ出されてしまったようで。

「まだ終わっていない」

はっきりとした口調でスピカは告げた。

「時間がないってことはそういうことだろ」

佇む幼馴染みを見つめる。

「だったら俺は──諦めない!」
 
 
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