第二章-前編-
やれやれ。見た目に似合わず言葉巧みに流暢な口振りで演説を熟す少年だと聞いていたので勝手に堅い印象を抱いていたのだが……
「思い込みで夜眠れなくて小説の内容と現実がごっちゃになるなんて」
ぎくりと肩を跳ねる。
「案外子供だよね」
「どうしたフォックス?」
「い、いや」
カービィと同じことを考えてしまった。申し訳ない。
「……しかし」
ロックマンはぽつりと。
「これでは“持ち腐れ”だな」
意味深な口振りにルーティは疑問符を浮かべる。
「怪我人を相手に手ぶらで訪問するのは無礼というものだろう」
「まあ、確かに」
言うとロックマンの目元にふっと不自然な影が差した。
「だから」
ゆっくりと手を挙げる。
急に空気が変わるものだからルーティも思わず目を見張った。するとロックマンは親指と中指の腹を素早く擦り合わせて。
ぱちん、と。
「隊員全員の出身地の名産品を持ってきた」
フォーエス部隊のメンバー、それを合図に何処からか平たく四角い包みや、彩りの豊かな果実が入ったバスケットをさっと取り出して。
「もちろん、甘い物もあるんだが――」
「えっ」
反射的に声を洩らしたルーティの如何にも大歓迎ですといった分かり易い反応に、確信犯基ロックマンはにこりと笑いかけて訊ねる。
「……食べるかい?」