最終章-前編-
「す、……すまない」
色々と怒鳴り散らしたいところだろうがそうもいかなかった。構えた盾で何もかも全て防げるはずもなく現に衣服には煤けた痕。顔の表面にも幾つか小さな火傷が見られ例え僅かであれ本人も暫くは浅く息を弾ませて整わなかった。
「無駄死にしてえのか。クソが」
視界が眩む。
「光も扱えるのか」
ダークトゥーンが睨んだ先には変わらず少年が一人佇んでいた。
「だろうよ」
「迂闊には近付けないな」
駆け付けたスピカと目が合うとダークウルフは勢いよく頭を下げて言葉を放った。何はともあれ無事ならそれで咎められる筈もなくスピカはもう一度幼馴染みを見詰めて目を細める。
言葉の通り。作戦立てもせずに攻撃を仕掛けるのはあまりに無謀というものだろう。だからといって何もしない選択は無いがそれにしてはあれ自身も攻撃を下すでもなくじっとしている。
何を考えているかも分からない。
……さっきのは?
「にぃに」
駆け寄ってきた妹に驚いて振り返る。
「……おにぃなんだよね」
視線を注ぐ先。ああ、と小さく呟いて寄り添うピチカの頭をそっと撫でる。
「最善を尽くしておいて皮肉ですね」
悪気はないのだろうが胸を刺すその言葉は的を射ていた。とにかくこの様子であれば此方から攻撃を仕掛けない限りは何も起こらない──