最終章-前編-
……え?
音のような声のような。曖昧なものが頭の中に響いて走る速度が急激に緩んだ。一方でダークウルフは自身の降下に合わせて両腕を振り上げクロスさせるようにして同時に腕を振り下ろし鋭利な爪から斬撃を飛ばして防壁に多段攻撃。表面は更にひび割れて突破を確信させる。
と──ダークファルコの撃ち出した弾が防壁を触れると遂に防壁は砕け散った。であれば後は慕うあの人の一撃を打ち込むのみと振り返ればその人は何故か酷く青ざめた顔で叫ぶ。
「離れろッッ!」
眩いばかりの光が前方に広がると現れたのは光纏う白く美しい巨大な鏡。晴天の陽光が射し込めば鏡の表面はたちまちに白く光り輝きそれだけで目を眩ませる。いけない、と思った頃にはもう遅く強く煌めくとその光は放たれた。
「、あ」
声を上げる間もなく。
受けた光が肌の表面を容赦なく焼き焦がす。大部分が影によって生成されたその体は光に滅法弱く激しい痛みすら通り越して表面がどろりと融け出した。まるで粘土のように爛れてくるとようやく思考が絶望の色に染まる。
……嗚呼、嗚呼。
こんなはずじゃなかったのに。
「ぐ、っ……」
ばちんと現実に引き戻されれば妄想から解き放たれて本来の景色が視界に戻ってくる。目の前には既の所で飛び込んだダークリンクが奥歯を噛み締めながら盾を構えて光を防いでいた。
「トゥーン!」
叫べば。地上で待機していたダークトゥーンが小さく頷いて予めダークリンクの足首に絡めていた鎖を引き戻す。ダークリンクは呆気にとられるばかりのダークウルフを捕まえると引力に身を任せてそのまま勢いよく──地面へ。