最終章-前編-
「リーダー!」
振り返ればダークウルフの姿があった。無我夢中で駆ける猪突猛進もいい所の隊長をわざわざ追いかけてきたのだ。危険だと言って連れ戻すべきだろうにそのつもりは毛頭ないのだろう。
「俺が正面から行きます」
「っ、逆だろ!」
言うがダークウルフは聞く耳持たず地面を蹴り出して速度を上げていく。あっという間にその距離を開かれると舌打ちをこぼして。
直線上。
佇む少年が一人。
金色の髪を不穏な風に揺らせて見詰める。双眸には創造の蒼と破壊の朱を燈らせてだけどただ静かに無音で不気味なまでに気配──いや存在そのものを感じさせない。淡い空色の光を身に纏って時折ブロックノイズが窺える。
違う。あいつじゃない。
これじゃまるで。
「リーダー!」
ぎくりとして顔を上げれば。──目前。
「ちっ!」
咄嗟に横に飛び込む。間違いなく自分を狙っていた不可視の攻撃は一直線に地面を抉りながら仕掛けてきた。思考を濁らせていた最中まさかこの状況で不意を突かれるとは彼奴の呼び声が無かったらどうなっていたことか。
「援護いたします」
銃器を構える音に振り返る。
「痛かったら──声を上げてくださいね」