最終章-前編-



◆最終章『ありがとう-前編-』



澄み渡った青い空と導きの陽の光。

平和を思わせる何でもない景色に似つかわしくない光景が今目の前で広がりを見せている。

旱魃かんばつ──草花はみるみる内に変色して動物達は異変に逃げ惑う。地面はひびが走り石の粒を舞い上がらせながらやがて陥没。もう既に幾つかの変化をもたらせておきながらけれどその根源はまだ瞬きの二つ三つを繰り返しただけだった。

……淡い空色の光を身に纏って。

双眸の朱と蒼は破壊と創造を指し示す。


だがしかし。その姿は。


「……お、にぃ……?」

立ち上がった少女はふらふらと歩み出す。

「ッピチカ!」

兄の声に振り向けば、刹那。

「え」

一線が頬を走る。

赤く滲む。

「ッッ全員──」

誰かがそれを叫んだ頃には遅く。


「────────ッッ」


耳を劈く声──いや。音のようなものが波紋を打つように凡そ彼方まで響き渡った。風が吹き荒れて誰もが身を庇うように腕を構えた刹那。見えない何かが大地に爪痕を残すが如く地面を直線に抉り粉塵を巻き上げる。そして。

「アアァアアアアァアアッ!」
 
 
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