第一章
「おい」
はっと現実に引き戻される。
「もたもたすんな。準備が出来たならさっさと出るぞ」
ルーティは手紙の中から一枚の紙を取り出した。
会場へ向かうための入場チケットである。
「ったく。ただでさえ時間ギリギリだってのに」
ああしてぶつくさ言いながらも、結局は待ってくれている。これが一年前ならずかずかと進んで余計に急かしたのだろうが……少しは仲良くなれてるのかな?
「……なんだよ」
視線に気付いたウルフが睨みつけた。ルーティは首を横に振って、
「ううん。行こっか!」
部屋を出て廊下に一歩足を踏み入れれば毎度お馴染み、
「おにぃ!」
と声高らかにピチカが胸の中へ。
「わっ、起きてたの?」
「もちろん! おにぃがその制服着てるの見たかったんだぁー!」
ピチカは小鳥が飛び立つようにぱっと離れ、手を後ろに回して見つめる。
「めちゃくちゃ似合ってるよ! かっこいい!」
「そ、そうかな?」
足の先から頭の先までじっくり眺めた後でピチカはにっこりと笑った。
「何処かの部隊の隊長みたい!」
「リーダー、だけどね」
持ち上げといて落とされる。ルーティは苦笑い。