第十二章
はっと振り向くよりも先に飛び退けば。
「……ネロ!」
業火が魔結晶を纏う。しかし手応えは感じられなかったのだろう当の本人は小さく舌打ちしながら苦い表情を浮かべている。だがしかしそれだけの攻撃には当然のこと留まらなかった。
「うわっ」
突如として頭上を過ぎるのはこの場にあるなど有り得るはずもない軽トラック。それが物凄い勢いで魔結晶目掛けて叩きつけられたかと思うと案の定爆発して大破。休む間もなく追い討ちをかけるように連続して飛び交う木や車が一体ここは何処のSF世界だと錯覚させる。
「声くらいかけてよね」
カービィが投げかける視線の先にはユウの姿。もちろん彼だけではなく今も尚得意の超能力を使ってネスとリュカが攻撃を与えている。
「知らないな」
呟いて。
視線の先は変わらないまま予告もなく後方から飛んできた紫の光を纏う矢を人差し指と中指の間で挟んで止める。小さく息を吐いてようやく視線を向ければその先にはブラピの姿。
「っ、邪魔……させるものか……!」
肩を上下するほどに息を弾ませ紅い瞳は何かに抗うかのように震えている。彼らに関しては先程の事象で解決したかのように思えたがそうというわけでもないらしく地上でも再び煩わしい音や声が各所で上がり始めていて。
「飛翔の奇跡!」
死角からブラピに突撃したのはピット。
「っ、お前飛べないはずじゃ」
「またの名を超能力の奇跡」
視線を向けたユウの双眸が仄か金色に煌めく。
「アイツはボクが引き受ける!」
「カッコつけやがって」
とはいえ。時間も残されていない。
「──頼んだぞ!」