第二章-前編-
「そっ」
ルーティは釣られたように立ち上がる。
「そんな別に謝らなくても」
「当然だろう、あれはうちの部隊の歓迎式典だったんだ」
「いや、予告も無くいきなりだったんだから誰が悪いとかないと思うけど……」
「だから誰も悪くない、仕方ないで済まされるような問題じゃない!」
小柄の割に(人のことは言えないが)強く出てくるタイプのようだ。
「それに加えて君は彼の特殊防衛部隊『X部隊』のリーダーじゃないか。この国の誇るトップ組織の指揮隊長に……まさか、怪我をさせてしまうとは」
ルーティは目を丸くして固まった。
「えっ?」
「撃たれたんだろう」
ロックマンはくっと眉を顰める。
「負傷した右肩は受け持った医師が思っていた以上に深く、全治には最低二週間はかかる……と……」
言っておいて目を凝らした。傷が見当たらない。
「……隊長」
ローブの少女が瞼を瞑って言った。
「昨夜、遅くまでガーレンド・サンド著の『渇望』を読んでいましたね」
「……ああ」
「さっき隊長が言ったのはその小説の物語中盤の内容ですよ」
呆気にとられている様子のロックマンに、とどめ。
「要するに。小説の内容と話が混同しています。彼は怪我をしていません」