第十二章
当然見惚れている場合じゃないと分かっているのだが足下には魔方陣。例えるならまるで水の中かのように見えない何かが纏わり付くようで思い通りに手足を動かせない。
そんな地上の戦士たちの事など気に留めず上空では激しい戦いが繰り広げられていた。
魔方陣が赤の灯をともせばその中心から紫色の光を妖艶に灯したエネルギーの柱が現れる。クレイジーは無限に出現するそれをタイミングをずらしながら幾度も投擲を繰り返すがその一方でパルテナは攻撃を易々と蝶が舞うが如く躱しながら接近。頬や髪を掠める直前薄く張られた防壁が弾き防ぐのを見届けて目前。舌を打って張り出した障壁が間一髪パルテナを遠ざける。
「……お前」
己の兄を見間違える筈もない。
まさか彼ら相手に協力的になるとも思えないし──可能性があるとすれば悪夢か。あの女神の中に吸収された兄がそれに冒されているのだとすれば納得がいく。成る程正義部隊だけでは仕留めきれないと見て分配していた創造神の力を一箇所に女神を創造神の器とさせた上で。
「小癪な真似を」
歪む感情に隻眼は重く深紅に沈む。
「その器が魂の質量に耐え切れるとでも」
「無理でしょうね」
先程までの様子とは打って変わってパルテナは肩を竦めて小さく笑う。
「けれど」
右の目にははっきりと蒼が浮かぶ。
「優しいあなたなら譲ってくれるでしょう?」