第十二章
訊ねるよりも早く。
「──!」
高音。頭の中にまで響いて渡る。
「これって」
"ハイパーボイス"──!?
胸に手を置いて願わくば彼方まで。大きく息を吸い込めば力いっぱいの声量で空気を震わせて響かせる。邪なる闇を粒も欠片も残さんとするように隅から隅まで聖なる音で満たす。
これは悪魔の綴った
──
「ぁぐ……あぁああ……ッ!」
各所で苦しみ呻く声が次々と上がった。
彼らを蝕んでいた悪夢に聖なる歌声は効果覿面だったらしくフォーエス部隊も体勢を立て直せない。ルーティもゆっくりと立ち上がり静かに息を呑んで事の顛末を見守る。
「何処までも……ッ小賢しい真似を……!」
ぐじゅぐじゅと頭の中を掻き回されるような。吐き気さえ催しながら依然としてルキナの体を乗っ取り続けるベンゼルは眩む頭を抱えて尚も歌声を響かせ続けるリムを睨みつけた。
「……くどいッ!」
よろめきながら踏み出して、地面を力強く蹴り出し飛び出す。歌う彼女に接近を図れば燃ゆる業火が渦を巻いて行く手を阻んだ。やがて炎を弾くようにして中から現れたネロが回避に入るより早く鳩尾を打ち蹴りで返す。
「かは……ッ!」
地面を跳ねて転がり伏せる。その間にも悪夢に冒されたフォーエス部隊の面々は次々と聖なる歌声に抗えぬまま膝をつき倒れていく。
……これなら!