第十二章
腕が。……腕が。
殺させてはいけないと。それだけはさせてはならないと心に決め込んでいたのにこうも早い段階で最悪の事態を手招くことになろうとは。
青ざめるルーティは言葉にならないまま顛末を見守った。その一方でロックマンは右腕を跳ねられたことにより平衡感覚を失ったのか後方に倒れかかってしまう。その隙を見逃さずダークマルスは着地と同時に踏み込むと蹴り出した瞬間剣を大きく横に薙ぎ払った。
絶えず舞う鮮血にルーティは眩みそうになる。なんで、と声に洩らした。滲むのは涙ではなくけれど他でもない負の感情には違いなく。
「──ッ!」
飛び出そうとして。
腕を掴み止めたのはフォックスだった。
「フォックス!」
「ルーティ、危険だ!」
振り解こうとするも頑なに離さない。
「でも!」
その意図は直ぐに明かされる。
「え」
三度、赤が舞う。けれどそれは今度こそロックマンのものではなかった。──青白い光の粒の群れが弾けるとそこには先程失われたはずの右腕が砲口からエネルギー弾を放った後で。
「マルス!」
ぎくりと反射的に振り返ったがどうやら攻撃を受けたのはパートナーではないらしい。
「何かあったみたいだね」
その証拠に今しがた攻撃を弾いた彼は一旦飛び退くと此方と背中合わせとなり構えていた。
「ああ」
自分たちが対面しているダークシャドウ然り。
「一筋縄ではいかなそうだ」