第十二章
鈍く響く。次の瞬間叩き付けられる。
「──スピカ!」
直ぐさま起き上がった。側面から飛び込み蹴り技で強引に攻撃圏内から弾き出したのはスピカである。お陰でルーティは危機を脱したものの肝心の彼は無防備な体勢でそこに残っている。
だがしかしスピカも何の考えもなく飛び込んだのではなかった。小刀が遂に刀身を見せ銀色の光を引きながら素早く鞘から抜かれた次の瞬間高い音を立てて受け止められる。間一髪攻撃を防いだのはダークウルフの構えた拳銃。恐らくもう使い物にはならないが幸い武器程度のこと影さえあれば幾らでも調達できる。
拳銃は喪失したが、寸前に攻撃は受け流した。左手を翳し黒い靄のようなものが次の拳銃を生成しようと纏わりつくが裏では暗殺業を担うミカゲがその僅かな隙を見落とすはずもなくすかさず左手首を蹴り上げる。怯むダークウルフに次の攻撃を打ち込むべく素早く印を結び今度は水纏う大きな手裏剣を作り出し、構えるが。
「──ッ!」
その視覚から受けた攻撃によって弾き飛ばされ呆気なく地面に転がった。ダークアイクの扱う両手剣の側面を使った重い一撃。その彼と入れ替わるようにして黒い靄が人型を生成したかと思うと現れたダークマルスが剣を引く。
ぎくりとして身を乗り出す。
叫ぶ。間に合わない。
「……!」
跳ね飛ばされる黒い物体を正しく捉えてはいけないと自分自身を律した。けれど噴き上がる赤だけはどう足掻いてもそれのみでしかなく。
「っ、あ」
次第に青ざめる。
「ロックマン!」