第十二章



水飛沫を上げて跳び上がる。

「せいっ!」

次の瞬間──ローナは空中でミカゲの苦無を交差させた腕で受け止めていた。見れば生身などではなく腕には薄く水のベールを纏っている。

「水タイプには水タイプで決まりっしょ!」
「随分と古典的で御座るな」

ミカゲは目を細める。

「電気タイプに挑む貴方が言えたことかしら」

鞭の音。はっと目を遣れば蔓の鞭を手に回転するシフォンの足下から花弁が発生──もう一度鞭を鳴らせて解き放つ。

「食らいなさい!」

大量の花弁が舞うように強風に乗せられて突撃する。既の所で思惑を察知したミカゲは苦無を消失させると印を結び変わり身の術──現れた丸太を足蹴にしてローナも巻き込みを回避。

「もーっ危ないじゃないか!」
「当たらないように操っているわよ」

小さく息を吐き出すシフォンの付近に着地した次の瞬間にはクラウドの大剣による一撃が地面をも抉る勢いで降り注いだ。砂煙が舞い上がり指示を送っていたレッドは目を凝らす。

「、!」

砂煙を突き破り飛び出してきたのはシフォンとローナだった。大剣に殴りつけられたようで砂煙の晴れた先にはクラウドが大剣を肩に担ぎ、紅い双眸で見据えている。

「レッド!」

目を開いたその頃には回収されていた。直後にまさか自分のいた場所に複数の矢が突き刺さるものだとは思わず目を開く。執拗に追尾する光の群れを躱しながらネロは後方を睨みつけて。

「、ぐ」

程なく異変は訪れる。また先程と同じ魔方陣が今度は幾つも地面に浮かび上がったかと思うとまたも此方の行動に制限を掛けたのだ。対等にやり合えるものと立ち向かった直後にこれでは隙を突いた盤面であれアイクのように返り討ちとされてしまう。今度は誰がマスターハンドの能力を使役しているのか──しかし彼らもそう簡単に尻尾を見せるつもりはないだろう。

……このままでは埒があかない!
 
 
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