第十二章
ぎり、と奥歯を噛み締める。
悔しかった。
それは確かに紛れもない事実だったから。
「お前が自分の行いを正義だと疑わないのならあれも変わらない。ヒーローごっこを卒業した俺にとやかく言えはしないさ」
そうして。
「ただの口論でどうにかできる世の中か」
静かに細めたその人の目は。
「……いい時代になったものだな」
何処か憂いを帯びていて。
「本当に守りたいものがあるなら戦え。戦って討ち取ってみせろ」
どちらが正義であるか以前に。
戦士なら。
「……それで」
ルーティは首を傾げる。
「帰っちゃったの?」
「仕方ないだろ」
スピカは急に膨れっ面で。
「剣も銃も向けられてたんだぞ」
そりゃそうだ。
「見逃してもらえたんだね」
「父さんがいたからな」
スピカは小さく息を吐く。
「俺の仲間を討ったのも利用したのも。悪夢に冒されていたからじゃない。あいつらの讃えた正義が繋いだ単なる結果でしかないんだって、思い知らされた。自分が破滅するかもしれない絶望の未来を変えるためだったとしても、それでも迷いなく生身の人間だけじゃない思い慕う仲間さえ手に掛けられるのは」
眉を顰める。
「それがあいつらの正義だからなんだ、って」