第十一章
「──明日の正午。レイアーゼ高原」
その場所は。人里を離れた都市南部に位置している。世界遺産にも登録されている白夜の森を前に広がる高原は森の中と比べれば比較的おとなしい部類の野生動物と魔物が共存しており、一部の人々からは観察や撮影に適した場所だと隠れスポットとなっているのだが。
「くくく」
ベンゼルが笑った。
「けっ。気味の悪いヤツだぜ」
「ファルコ」
言うなとばかりにフォックスが視線を遣る。
「──要望に応じよう。我々は必ず明日の正午指定の場所で君たちを待つ」
何だろう。
この言い知れぬ胸騒ぎにも似たものは。
「開演時間には遅れないように」
「カッコつけやがって」
ベンゼルは胸に手を置いて深く頭を下げた。
その姿はさながら指揮者が観客へ送る挨拶かのようで。この場は撤退という形を誰も余儀なくされる中ルーティはただ一人を見つめて。
「ロックマン」
ああ。いつの間に。
彼の心は蝕まれていたのだろう。
「ルーティ」
その声は届かない。紅の双眸が見つめる先にはきっと果たすべき正義だけ。
「行くぞ」
あまりにも煮え切らない結果にもやもやとした感情を胸に抱えながら。
ルーティはその場を後にする。
「くく」
もう少し。もう少しで。
「くはははは……!」
──運命の未来はすぐそこに。