第十一章
気付いた時には振り下ろされていた。
銀の光沢。血飛沫。
──貴方のためならば。
「ですが」
その男は続けざま口を開いた。
「影たるもの。光ある限り朽ちるわけにはいきません」
振り下ろされたはずの剣は手の中に。
「……貴方の」
鮮血が滴り落ちる。
「本当の最期を見届けるまでは」
化け物かよ!
「な……」
カンナが思わず声に洩らした次の瞬間には紅の尾を引きながら振り向き、立ち上がると同時に回し蹴りを繰り出していた。呆気なく蹴り飛ばされる彼女を最後まで睨みつけながら、ダークウルフは不機嫌そうに手を払う。
「こっちがまだ話してんのに痛ェだろうが」
ええぇ……
「ウルフは同じことしちゃ駄目だよ」
「忠犬と一緒にするな」
ばっさりと切り捨てられたがそれはそれで信頼されていないみたいで突き刺さる。
「しねぇからな」
念を押されてしまった。
「スピカは慕われてていいなぁ」
「そこまでやれとは言ってねえよ」
……ごもっとも。