第十一章
……ここは大人しく質問に答えておくか。
「牢獄地帯だよ」
「ああ、そういえば──彼は此処に罪人として収容されていたのだったね」
わざとらしい言い回しにスピカは顔を顰める。
「お陰様で。俺はてめえらに牢獄送りにされた上にあいつらまで人質に取られた。妙な真似をすれば陽の光に当てて骨の髄まで焼き滅ぼすといった脅し文句まで突き付けられた上でな」
ロックマンは含み笑い。
「再会した俺たちは互いの情報を交換した──驚いたぜ。まさか仲間に仲間を殺させて事件をでっち上げるとは。俺が千里眼でも持ってりゃ直ぐに駆けつけて嘘を真にしていたところだ」
「それはそれは末恐ろしいことだな」
黒い閃光が跳ねる。
「スピカ」
呼ばれて小さく息を吐く。
「とにかくこいつをそのまま先に進ませるわけにはいかなかった。でなきゃ情けをかけてあっさり殺されるのが目に見えてる。そのくらいは分かるさ。俺はこいつの幼馴染みだからな」
「だから入れ替わった、と?」
スピカは頷いた。
「そうだ」
真実と向き合う覚悟が出来たら追ってこい。
それまで俺が食い止めてやる。
「慈悲深いことだな」
ロックマンは笑う。
「これじゃどちらが正義なのやら」
「はん。自分で言うのか?」
言うや否や浮かべた笑みを更に深める。
「──もちろん」
赤の双眸を擡げる。
「君たちに手向ける慈悲はない」