第十一章
ぎり、と。奥歯を噛み締め、軋む音。
「奴さん相当お怒りってかイカれてるぜ?」
「分かってるよ」
先程の攻撃を仕掛けたのはパックマンだった。影の中に身を潜めているというだけで此処には他にも隠れて様子を窺っている連中がいることだろう。であれば、退路を確保出来たところで背中を向けて逃げ出すなど得策ではない。
第一この地下監獄の構造だって此方は一片たりとも把握していないのだ。反して彼らは司令塔自体が拠点なのだから仕掛けなど把握していたところで何らおかしい話でもない。
参入が遅れたとはいえ負傷したスピカを連れて考え無しに退避するというのはあまりにも危険すぎる。待ち伏せされている可能性だって──
「手詰まりといったところかしら」
闇の中から現れたルフレがくすっと笑った。
「難しく策を講じるまでもないみたいね」
「笑ったら可哀想だよ。あっちは子供なんだ」
ルーティはちらりとスピカを見遣る。
「何だよ。気を遣ってんじゃねーだろうな」
「そんなのじゃないよ」
「だったらさっさとあいつらぶっ潰すぞ」
首輪の効力というのは流石は創造神が手掛けたとだけあって馬鹿にならないもので傷の大半は癒えていた。けれど体力を消耗したのは間違いなく強気な態度ではあるが疲労感が拭えない。
「一つだけ質問させてもらいたい」
ロックマンが口を開いた。
「君たちは一体いつから入れ替わっていた?」