第十一章
偽物集団『ダークシャドウ』。
その正体は創造神マスターハンドの手によって生み出された精巧なるファイターのコピー。本物と異なるのは光に弱く浴び続ければその体はたちまちに焼け爛れてしまうこと。反対に闇の中ともなれば縦横無尽で影に身を隠したり──時には影の主に化けることが出来るのだ。
が。それはあくまでも体内に影虫を飼うダークシャドウの話で自分は違う。ダークピカチュウと名乗る期間もあったが結局のところは人間。
取り繕ったところでそれだけは──
「僕たちが改造してあげる」
「、は……?」
今度も本音が声に漏れた。
「バラして組み立ててってな話じゃないよ。今お前に渡したそれ──あいつらの動力源である影虫を使って開発したんだ」
スピカは改めて首輪を見つめる。
「もちろん、有事の時以外は透過しているから光によって消滅する可能性は低い。まあ断定は出来ないけど。使用例がないからね」
「それを俺に寄越してどうしろってんだよ」
「察しが悪いなあ」
──次の瞬間には目の前にいるのだから言葉も失くしてしまう。
「実験体になれとは言ってないじゃない?」
「無償で頂けるなら安いものだろう。そいつを使えば奴らと同じ技を扱える」
口を開くよりも先。
「お前の身が耐えられればの話だが」
マスターはひと呼吸置いて続ける。
「実用例もない。本来なら実験体を用いて試運転といきたいところだがそうしてやらないのは──察しの良いお前なら判るだろう?」
スピカは眉を顰める。
「あいつらにバレないためか」
「正解」
双子は声を揃えた。
「敵を騙すならまず味方からって言うでしょ」
「安心しろ。この創造神が手掛けたのだから」
「お前だから疑ってんだよ」
「くく。違いない」
ふわりと兄の元へ浮遊して舞い戻る。
「突っ返してもいいんだからね」
「選ぶのはお前だ」
投げ掛けられる視線。
「……俺は」