第十一章
ばちん、と。──閃光が走った。
異変を前に静かに目を開く。どうしたことか、間もなく放たれるはずのエネルギー弾の気配がみるみる内に失せて。痺れるような感覚。
「驚いたかよ」
はっと目の前の少年を見遣る。
「無理もないだろうな」
先程とは打って変わった態度で不敵な笑み。
「ま、そっちも騙してたってんだから」
程なく少年の体は部位の境目の判別がつかなくなるまでに真っ黒に染められて。
「おあいこだよなぁ?」
弾ける。
「、……! スピカ・リー……!?」
ロックマンが捕らえていたのは。
偽物軍団『ダークシャドウ』のリーダー。
いつ? 何処で?
そもそもどうしてこんな術を──
「──ッッ!」
思考を巡らせている隙。黒の電撃がスピカの体から四方八方へと容赦なく放出されるとロックマンは思わず手を離してしまった。それにより解放されたスピカは着地と同時にすかさずその距離を詰めて鳩尾に蹴りをお見舞いする。
「ロック!」
蹴り飛ばされるロックマンを目にマークは鋭くスピカを見据えて魔導書を構えた、が──その行動もお見通しだった様子で術を繰り出すより早く電撃によって弾かれた。
「せっかちなことだな」
くく、と笑って閃光の残る右手を払う。
「まあ聞けよ。俺も人間だからな。人より少し優位に立てばそれだけで饒舌になるんだ」
マークは睨んでいる。
「俺があいつに化けられたのは」
くい、と首に飾られた黒い首輪の隙間に人差し指を差し込んで軽く引いて見せながら。
「こいつのお陰さ」