第十一章
見据えて返す。
「そうだ」
笑ったり怒ったり戸惑ったり。
想う日々が交わした言葉が積み上げてきた絆が情景が砂のお城のように崩れ去る。
初めから。
信じてなどいなかった。
何も。
絆なんてものは存在しなかった──?
「くくく」
闇の中でせせら嗤う。……嗚呼。
希望に縋り続けてきた手が絶望に伏して静かに解かれる瞬間のなんと芳しいことだろう。初めから絶望している人間よりも希望から一転絶望へと引き摺り込まれたその瞬間こそが美味。
「君にはその顔がよく似合う」
ゆっくりと差し向けられた左腕が目の前で青い光沢の鉄砲に変形した。出血でもう既に意識が
朦朧とする中砲口の奥で青白い光が次第に膨張していくのを完全には見届けず瞼を閉ざす。
「良い来世を」
口元には薄く笑みを浮かべて。
滴り落ちる雫は鮮やかな赤か無色透明か。
「──さようなら」