第十一章
……寒い。
明かり越しに自分の吐き出した息が僅かに白く映るのが窺えた。一帯の気温が低いかのように感じていたが気のせいではなかったらしい。
人体にとって適切な温度管理が為されていないのも此処に収容されている罪人らの扱いがその程度であるといった証拠か。まさか同情まではしないが環境まで冷たく見放されては償える罪であれ放棄してしまうような気がするが──
「──ッッ!」
ガシャン、と。鉄格子に飛び付いたその音に我ながら大袈裟に驚いてしまった。
「た、助けてください」
長く髪を垂れた女性が情に訴えかける。
「私じゃないんです。お願いします」
息を呑む。
「まだ小さい子供がいるんです」
格子を握ったまま。
「……お願い。……どうして」
ずるずるとへたり込んで。
「アアアアア! 信じて信じて信じてよォオォオオオ!」
その瞬間。
まるで引き金のように四方八方から反響も合わさって嘆く声が響き渡り始めた。格子を激しく揺らす者泣き叫ぶ者。聞こえてくる声の数からして収容されている人数もそう少なくはないのだろう。暫し立ち尽くしたが切り替えるべく、瞼を閉ざして小さく息を吐く。
「出してくれよお!」
ゆっくりと瞼を開いて足を踏み出した。完全に気にならなくなった筈もないが関わってはいけないと律して歩を進める。
「アアアア!」
そうして牢獄地帯を過ぎようという頃。
ふと。ルーティは足を止める。