第十一章
エレベーターの扉が開いた。
ひんやりとした空気が頬を撫でる。息を呑んで足を踏み出せば程なくエレベーターの扉は閉じられ辺りは今度こそ完全な暗闇に包まれた。
しかし取り乱すことはなくそっと手を差し出し掌の上に青い球を生み出す。ぱちぱちと閃光を小さく跳ねる電気の塊は少年が歩みを止めない限り行く手を照らし続けるだろう。
ルーティは辺りをゆっくりと見回した。
置き手紙には明確な場所など記されていなかったのである。几帳面である彼が重要な点を書き忘れるなど有り得るはずもないがその一方でエレベーターの扉が開いた途端正面から出迎えるつもりなのではとも考えていた。
結果として見当たらない。当然気乗りもしないがやむを得ずルーティは探索を決意する。
一歩。踏み出せばまた靴音が響いて。
続けて繰り返し前へと進む。
遠く呻き声にも似た音を耳にしながらそれでも少年は立ち止まらない。
健気で。直向きな想いを胸に。
今にもその手からこぼれ落ちそうな。
──絆を信じて。