第十一章
罠なのだろうか。
ふと頭を過ったそのひとつの可能性を振り払うことが出来なかった。何より指定された場所が司令塔の地下二階というのが気掛かりである。
戦士であれば知らないはずはない。
あの場所は。
意を決したように小さく息を呑んで手紙を元のベッドの上に返す。誰かと連絡を取っておこうかとも考えたが踵を返せば掻き消された。
そうして少年は迷いのない足取りで部屋を後にする。この先で何が待ち受けていようとも。
……僕は。
扉を閉めて息をつく。よし、と顔を上げて振り返ると見覚えのある姿がそこにあった。
「う、ウルフ」
このタイミングで鉢合わせるとは。
「何処に行くんだ」
それは此方の台詞だと返したいところだったが腕を組んでじっと見据えるその人を相手にその返しは通用しないだろう。
唯一無二のパートナーである彼にならとも考えたがそれでは幾ら何でもロックマンを信用していないという話になる。想像しているものとは異なる案件だった場合のリスクが高い。安易な行動で結果として関係を拗らせてしまうのでは流石に笑い話にもならない。
「ふ、フォックス達に連絡しようかなって」
目に見えて警戒を張っている彼のこと。小腹が空いたので買い出しになどと言い出せばついて来るのは明白だ。であれば最も無難な言い訳もこのくらいなものだろう。