第十一章
「うー」
しかし不満の晴れないローナ、唸って。
「我らがリーダーはお人好しすぎだあっ!」
「わああっ!」
がちゃんと。
先の扉が開かれたのは直後のこと。
「ルーティ」
打って変わって目の色を変えたローナが腕を差し出して行く手を阻む。警戒の目を向けられたその本人は此方に気付くや否や笑みを湛える。
「ああ。君で御座るか」
歓迎式典の日。
彼を手に掛けようとしたのは──
「っ、」
まだ真新しいばかりの記憶がその瞬間身体中を駆け巡り慄然とする。忍び装束を纏った少年はあの日と変わらない目で此方を見つめていた。
「何処に行こうってのさ」
「はは。ただの仕事で御座るよ」
彼だけは紛れもなく自分を殺そうとした。事実恐怖が体に染み付いている。
例えば戦場へ繰り出したなら刺すような気など幾らでも受けるだろう。けれど彼の刃は受けて立つが当たり前の世界とは程遠く異なる日常の中で向けられた。戦士ならばいつ如何なる時も気を張れなどといった話は正直難しい。
そもそも前提から違うのだ。
だって。この人は。