第十一章
「、と」
背中に回された手が上体を支える。小さく息を吐いて恩人を見上げれば垂れる紺色の髪。
「大丈夫ですか?」
偶然にも転倒を助けたのは。
「る……ルキナ、さん……?」
タイミングが良かったのか悪かったのか。
先述の通り既の所でルーティを助けたのは藍の衣を身に纏った長く美しい紺色の髪が特徴的な少女ルキナだった。今現在向かいに座った彼女は黙々と和食を頂いている。
しかし女性でありながら剣を取って戦うというのは差別表現ではないが珍しいと思う。うちの部隊の剣士が揃いも揃って男性であるため余計そう思ってしまうのかもしれないが。
……そういえば。彼女が腰に据えた剣もマルスと同じ宝剣"ファルシオン"なのだったか──
「どうかしましたか?」
びく、と肩を跳ねて顔を上げる。
「あはは……き、綺麗な人だなって」
我ながら苦しい言い訳ではあるものの一瞬でも疑ってしまった自分が憎い。いくら仲間を庇いたいからといってそれは無いんじゃないか……
「おかしな人ですね」
ルキナは柔らかな笑みをこぼして。