第十一章
……思わず逃げてしまった。
しかしまあ、彼に人を惹きつける能力があるというのも頷ける。あれは無意識だろうか。
溜め息と同時にエレベーターの扉が開かれる。食事を求めて降りてきたが流石に司令塔の一階ともなれば人の出入りも多く声や音が聞こえてきて言い知れぬ安心感を覚えた。
「ええっと」
小さく零して見回せば程なく見つける。食堂の看板を頼りに開放されている扉から入れば先程以上に騒がしい声や音がルーティを迎えた。
──安心するな。人の居る場所こそこうでなくてはと思う。それは自分が一般的に騒音が禁止されている区域や施設を得意としていない時点で何となく分かっていたことだったけど。
「あ」
兎角空腹を満たすべく食券を購入しようと券売機へ向かっていたその時だった。
「ソニック!」
晴天のような特徴的な青とその髪の形は今の今更見間違えるはずもない。
「ん?……ルーティ!」
彼も此方に気付いて声を上げた。
「またチリドック食べてるー」
「それも二つ目だぞ」
向かいに座っていたスネークが便乗する。
「お前こそまたカロリーメイトじゃないか!」
「これだって立派な食事だ。それも一箱で一食分の栄養を賄える優れものだぞ」
「お前なぁ。食堂に何しに来たんだ?」
「俺にはそいつが夕飯には見えないがな──」