第十一章



彼ばかりではないのだった。上層部より状況を問われ忙しく対応に追われているのは。

「……うん」

小さく頷いて応える。

「仲間を失った痛みに苦しみを覚えているのは君だけではないさ」


信じて築き上げてきた城が。

いとも容易く脆く儚く崩れていく。


考えるだけで胸の奥がぐるぐると掻き乱されるみたいに苦しかった。

「この痛みは」

正面に回ったその人は髪を指で掬い上げる。

「同じでなくとも分かり合える」


妖艶を帯びる双眸に。

鼓動がドクンと高鳴って。


「し、食堂」

思わず胸に手を置いて引き離す。

「いってくるから、」

止まぬ動悸を振り払うようにして言葉も待たず部屋を飛び出す。扉が閉められても尚その場に立ち尽くし続けるその人は。

密かに。

意味深な笑みを口元に浮かべるのだった。……
 
 
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