第十章
一斉に視線が集う。
現れたのはカービィだった。受ける視線に怪訝そうにしながらも事情を把握するべく歩を踏み出したが地面に横たわるピットとその側に積まれた赤に濡れた剣に気付くと足を止めて。
「……ピット?」
リンクとパルテナは顔を見合わせる。
──事情を説明しても尚カービィの反応は皆が思っていたずっとより乏しいものだった。いや或いは諸々の感情を過ぎて却って冷静になっていたのかもしれない。冷静というよりは感情を表に送る信号が正しく機能しなかったとか……
「カービィ」
影を差して不意に口を開いたのは。
「お前。昨日は何処にいた?」
ロイが問うのを訝しげに見つめ返す。
「なんで?」
「質問に答えろよ」
緩く。拳を握り締めて呟く。
「お前がやったんだろ」
この空気は。
「はあ? なに言ってんの?」
「──恍けるなよ!」
一気に感情を爆発させて吐き散らす。
「昨日の夜。俺が寝ている隙に能力をコピーしたお前はそのまま予め裏庭に呼び出しておいたピットを殺そうと企んだ──」
これには流石のカービィも顔色を変えて。
「僕を疑ってるわけ!?」
「疑わないはずがないだろ!」
陰る。今にも雨が降り出しそうな。
灰色の雲が何処までも。
「信じられない……この状況で」
「、こんな時だからだろ!」
「──やめようよ」