第十章
モナドの視せた未来の中に犯人の姿は。それが無くともせめて痕跡だけでも。
「いいえ」
しかし返ってきたその一言が無情にもそこでの真相は掴めず終いであることを示す。
「……剣が凶器ですか」
「剣士が物騒なことを言うなよ」
抜き取られた剣を見遣る。
「……え」
あれ。
「ようやく気付いたか」
我が目を疑った。
「……なんで」
形状から何まで間違いない。赤く血濡れた剣の中にひとつ見つけたのは今この腰に下げた鞘に納まっているはずの。
「なんで……俺の、封印の剣が……!」
声に出したばかりに疑いの目が一斉に此方へと向けられるのが分かった。
「お、俺じゃないッ!」
咄嗟に否定して青ざめながら後ずさる。
「第一、あんな高い所まで飛べないだろ!」
ピットが吊るされていた箇所を指差して焦燥を表情に浮かべながら無実を訴える。自分だって翼があるわけでなければその問題となった箇所周辺に窓さえ見当たらない。
「それに……剣だって、ここに……!」
そう。この世界に一つしか存在が有り得ないとされる封印の剣は間違いなく手で触れ確かめた通り鞘に納められているのだ。
「落ち着いてください」
「疑われてるのに落ち着けるかよ!」
「──何の騒ぎ?」