第十章
幸いと言うべきかピットを突き刺していた剣は要所要所を外れていたらしく被害を受けた翼や肩を二度と動かせないなどといった最悪の事態には至らないようだった。それでも傍目に見て痛いことには変わるはずもなく。視覚から得る情報でそうであれば本人の痛みこそ相当なものだろうと推測してロイは表情を歪ませる。
「さっきの質問に答えてもらおう」
と。剣を抜く音に目を開いた。
「あら。私達を疑っているのですか?」
「登場には些か都合が良すぎると思うが」
「向けるべき矛先が違うんじゃねえか」
狙杖を構えて、ブラピ。
「私達は争うつもりなど少しもありませんよ」
そのやり取りの隙にパルテナの翳した白く淡い治癒の光は次第に失せていき、ピットの受けた傷は完全に塞がった。役目を終えた女神は立ち上がり改めてメタナイトと向き合う。
「──
そして語る。
「シュルクが遺体として発見される前……彼が警告していたんです。ピットの身が危ないと。神剣モナドがそう教えてくれたのだと」
信じ難いなどといった話ではない。確かに彼はモナドを通して未来を視る能力を持っていた。それはいつだったかトーナメントで戦った際に誰もその目で確認している。
「じゃあ」
ロイは震える口を開く。
「……犯人は」