第十章
ひらりと。白い羽根が舞い落ちる。
屋敷の壁を沿うように視線を上らせていけば。
一番高い屋根の近く。その壁に。
「ピット!」
誰も足を止めて硬直を余儀なくされていた。
見上げる先。白い翼を広げた少年は、肩に翼に剣を突き立てられ磔刑の様。項垂れたまま動く気配はなく白に滲んだ赤がぽたりぽたりと滴り落ちるのを誰も目が離せない。
「ぁ、あ」
どうすれば。
「ピット」
思考がまとまらない。
「血が固まっていないということは」
「まだ生きているんじゃないか」
リンクとアイクが口々に。
はっと現実に引き戻された頃にはもう既にメタナイトが蝙蝠の翼を広げて飛び立った後で。
「、!」
浮上して傍らまで。まだ、息はある。安心はしたが一先ず剣を抜こうと手を伸ばした途端阻むようにして幾つもの矢が目前を過ぎて壁に突き刺さった。敵襲か否か確かめるべく振り返る。
「そいつに触れるな」
纏う空気からあからさまに苛立った声で言葉を吐いたのはブラピだった。
「何故ここにいる?」
「はん。どうだっていいだろ」
「いいえ、よくないですね」
その背後に現れたのは女神パルテナ。
「とにかく──今はピットを下ろしましょう」