第十章
……ざわつく。
「ネロ!」
声を上げるフォックス。側にあった脚立が巻き込まれて倒れる。気付けば今度はネロがパックマンの胸ぐらを掴み本棚に押し付けていて。
「、あは」
それだというのに。
「いいよぉ?」
少年は不敵な笑みさえ浮かべる。
「そうやって今度はオレを殺すんでしょ?」
どうして。
こんなことになってしまったんだろう。
「ししっ」
やり場のない感情を叩きつけるかの如く手荒に解放して舌打ちをこぼす。解放を許されたその少年はそれでもニヤニヤと笑っていて。
「マークとシュルクは同い年で」
ぽつりぽつりと。
「いつも仲良くさせてもらっていて。マークが殺された時もシュルクは落ち込む拙者をずっとずっと励ましてくれて。……だから」
泣き腫らした赤い目から大粒の涙がぽろぽろと零れ落ちる。そんな姿を見せられてしまっては流石のネロも顔を背けてしまう他なく。
……ただひとり。ウルフだけが。
嗚咽するミカゲを腕を組んだ姿勢でただじっと見つめているのだった。……