第十章
ゆっくりと振り向いたその人の双眸は紅の色に染められて。ぼうっと見つめ返すその背後。
「……!」
不審な匂いの正体を知る。
「ユ、ウ……そ……れは……?」
──仰向けに転がる金髪の青年は。
胸を腹を裂かれ赤を散らせる。引き千切られた臓物は機能を果たせるはずもなく強烈な匂いを放つその正体で。う、と思わず口を覆った。
どうして。
フォーエス部隊のシュルクが──!?
暗く沈んだ夜の街に。
赤色灯が点滅を繰り返す。
「リオン」
はっと目を開いて顔を上げた。
「……ネロ殿」
事情聴取は粗方済んだものの重要参考人として現場を離れることが出来なかった彼らを迎えに駆けつけたのはネロだった。その背後には我らX部隊がリーダー、ではなくパートナーであるウルフ、そしてフォックスにファルコの姿。
「大丈夫……じゃないよな」
眉尻を下げて気を遣うネロにリオンは苦笑にも似た笑みを浮かべて肩を竦める。