第十章
「遅れて、ごめんなさい」
そんな声が聞こえてきたのは直後のこと。
「ルーティ」
逸早く現場に駆けつけられなかったのは恐らく警察と話し合っていたからだろう。何せただの一般市民が被害者ではない。正義部隊の一員であるマークの死──その関連性を見せつけるかの如く突き立てられた聖剣ファルシオン。
そしてこの事件の舞台は都心部にある時計塔という人目に晒されやすい公の場。頭が痛くなるほどの状況悪に話が長引くのも頷ける。
「……ロックマン」
これほどまでに顔を合わせるのが気まずい状況など他にあっただろうか。いつもならにこりと笑いかける彼も今回ばかりはそうもいかない。
「彼方と話の纏まりはついたかい」
「う、うん。とりあえずマルスは……僕たちが屋敷に連れて帰るという話で落ち着いたよ」
ロックマンはそうか、と呟いた。
「嘘偽りなくそれで話の決着がついているなら此方側としても問題はない」
そう言う彼の背で両手で顔を覆いながら俯いて時折肩を跳ねるルフレを少女が宥めている。
……ルキナ、だったか。
「詳しい事情の調達は其方に任せるよ」
「あ……ありがとう」
思わず視線を迷わせるルーティに。
「当然だろう?」
ロックマンは小さく笑み。
「仲間、なのだから」