第十章
──嫌な夢を見た。
もうはっきりとは思い出せないけれど起きた瞬間に体全体が気怠く暫くは自分が目を覚ましていることに気付けなかったくらいには。何だか夢と現実の区別がつかなくて。
「……、」
ゆっくりと体を起こして小さく息を洩らす。
今日という日が稽古の無い日で本当によかったなどと内心感謝しながらベッドの縁に移動して足を下ろした。こんな気分でも容赦なく窓から射し込んでくる陽の光が快晴を示している。
どうせ、雨ならそれらしかったのに。
携帯端末は連絡用でしか使用しないのだがふと枕元に転がったそれを視界の端で捉えても望むべき通知は一件も入っていない様子だった。
……やっぱり。
信用されていないのだろうか。
パートナーであるアイクは既に朝食をとるべく食堂に向かったのだろう。自分も早いところ気怠い気持ちを起こして切り替えなくては。
漸く立ち上がりベッドを離れてクローゼットへ向かう。そうして取り出したいつもの衣装は、何故か普段より重たく感じるのだった。……