第十章
そう語るのは──ロックマンだった。
「我々にとって正義とは"絶対"だ」
双眸の赤の奥に仄かに光る蒼。
「己が正義を貫く為であれば最善を尽くす」
捕らえられている間片時も手放さなかった斧が振りかざされた。それは決して逃れる隙を得るべく握られたものではなく。
「その"最善"が」
意図に気付いて静かに目を開いたが刹那。
「──如何に狂気に満ち溢れていようとも」
斧は振り下ろされる。
投げ出されていた少年の脚に。
「っ……!」
なんで。どうして。
「お人好しな君に教えてあげる」
ハルは表情ひとつ変えずに口を開いた。
「枷となるものがあれば。ぼくたちは迷いなく斬り捨てる。これはその意思表示」
如何に嘘偽りのない純粋な意志であれ溢れ出る血に目を奪われて納得が出来るはずもなく。
「非常に残念なことだ」
程なくして背後に影が差す。
「──貴公はあまりにも優しすぎる」
意識の途切れる寸前に仄かに蒼白い光が少年に集うのを確かに捉えた。それを見ても尚。あぁよかった、なんて思うくらいには。
自分はどうしても。
心の底から"鬼"にはなれないようで。