第十章
光の粒子は仄かに蒼く。 先ずは血濡れた断面を蓋をするように塞いで止血する。尚も粒子は空気中から生み出され更に眩い光を放ち始めると──瞬く間に。彼の右腕を創り出したのだ。
「な……!」
見間違えるはずもなかった。
糸を通すように繊細で。けれど一分の狂いなく万物を創り出すその力はあいつと同じ──
「……これが。創造神マスターハンドの力か」
固唾を飲んで見守る他なかった。
そうだ。マスターはあの日奴らの術中に嵌まり捕らえられた。彼の気配も姿形も今尚窺えず、何処か別の場所に隔離されているものと思っていたが発言から察するにまさか創造神の力を己の意思で使役したというのだろうか──?
……いや。
そんな事態、今までに例がない。
「有り得るはずが」
思わず声に出して呟いた。
「"本来なら"そうだろうな」
ロックマンは己の右腕に触れて正しく機能することを確かめながら言葉を返す。
「どういう、」
「これは"未来"だ」
言葉の意図を把握できない此方の都合など差し置いて彼は変わらず淡々とした口調で。
「そうなるべき必然の事項に触れたというただそれだけの出来事に過ぎない──」