第十章
油断していた……訳じゃない。
ただ彼らは少なくとも此方が退却するまでの間再起不能だろうと信じきっていた。
あれだけの怪我を負わせたのだ。まさか殺してなどはいないが出血多量に骨折などと本来なら"立てるはずもない"。それなのにロックマンばかりか他の隊員も彼に続くようにして次々と立ち上がるなど異様な光景が広がっている。
「、ああ」
痛覚が失せているというはずもないのにまるで何も感じないといったように表情は無に等しくロックマンは折れた右腕を見詰めて。
「邪魔だな」
ぽつりと呟いて刹那。機械化した左腕の砲口を己の右肩に躊躇う様子もなく押し当てると──そのまま光弾を撃ち出したのだ。
「……!」
物凄く嫌な音が響いた。まるで水風船が割れたかのように散布する鮮血に紛れて爆発によって引き千切られた右腕が地面に転がる。
何が起こったのか。骨折と出血と敗北と、ただ正義が悪に叩き伏せられたそれだけが気に食わなかったという理由だけでは片付かない異様な行動に目を奪われる他なく。
「、!」
かと思えば。程なく変化が訪れた。