第十章
殺気が放たれるのは開眼の直後。
合図の後、一斉に目標を肉眼に捉えて誰しも幾度となく経験したであろう硬直を誘う。殺気を感じ取れば彼らはまずその方角を探るだろうが感知した途端に硬直が解ける自体を避けるため待機箇所を分散させる。
そうして気付いてからでは遅すぎるのだ。
戦場では。
一分一秒が生死を分ける。
「下劣な真似を!」
剣を抜いたルキナが振り向きざまに地面を蹴り出したがダークルカリオにより波導を纏った手刀で手首を打たれて。間髪を入れず正面に回り込まれたかと思うと鳩尾を膝打ち、回し蹴り。
「ッが!、ぁぐ」
地面を跳ねて転がり伏せるルキナに手放された剣は遅れてカランカランと放り出される。
「俺たちのこと散々悪魔だとか言っといてさぁ調子いいんじゃないのっ!?」
体勢を整える隙すら与えられず構えたところで崩される。圧倒的なまでの戦況不利。
「あはははははッ!」
それでもこいつらは止まらない。
俺が指示を出さない限り。
「……う、して」
呻く声に冷めた目で足下を見遣る。
「立場が一転した途端に被害者ヅラか」
銃口を向けるダークウルフ。
「君だって……同じ、」
有無を言わせず腕を踏み付ける。
「……五月蝿い」
憤怒に染まった漆黒の双眸は見下す。
「てめえらと一緒にすんな」