第十章
次の瞬間だった。
「──ッ!?」
四方八方より無数に突き刺さる。不意を突かれ針山にされたのではなくただそれは感覚的に。
ぞわぞわと這い上がる悪寒。目を開いて硬直を余儀なくされる最中、例えるならばそれは何か恐ろしい化け物に睨まれたような。
……いや、
違う。これは。
「気付いたところで」
正しく気配を察知した頃には目前で。
「もう遅い」
火花散らせる音を引き連れて。
黒い閃光を帯びた腕がロックマンの腹部を容赦なく叩きつけた。遅れて事態に気が付いた幾人かの隊員さえその次の瞬間には別の何かに叩き伏せられて為す術もなく。
音、音。
──俺が合図を出すまで隠れていろ。
スピカがフォーエス部隊と合流するよりほんの少し前の出来事だった。
「危険すぎます」
すかさず異議を申し立てるダークウルフに。
「考えなしで言ってるんじゃない」
スピカは冷静に正面を向いたまま返す。
「……いい考えがある」
「と申されますと」
「自分の"眼"を気にしたことはあるか」
突拍子もない質問だった。