第十章
……嗚呼。
ぞくりとした。その黒に堕ちた双眸は、確かに復讐の色に蝕まれていて。彼を思い遣るならば止めるべきだろうが二度とない機会に悪い心というものが疼いて声が出ない。
「ウルフ?」
視線は真っ直ぐその人を捉えたまま。
「……ああ」
きっと。この時を待っていた。
進む足取りは迷いなく。
靴音高らかに。正義がやって来る。
「……酷いですね」
苦い表情を浮かべて呟いたのはカンナだった。
「同じ人間のすることじゃないな」
「魔女より酷いことをする人間がいるのね」
各隊員が惨状に口々に声に漏らすのにも動じず第四正義部隊『フォーエス部隊』を率いてただただ先頭を突き進むロックマンは終始無言で。連絡を受けて即座に駆けつけたが人の息ひとつ聞こえないこの現状では生存は絶望的だ。
けれど、せめて。
目的だけは果たさなくては。
「……隊長」
声が掛かるのと同時に足を止める。
ゆっくりと。擡げる視線の先に見つけたのは。